katsu708のブログ

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ヒトラー~最期の12日間

 空耳嘘字幕で有名なこれ。

ヒトラー~最期の12日間~スタンダード・エディション [DVD]

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 十分な装備が無い市民にベルリンの防衛を命じる幹部ゲッペルスの「我々は国民に強制はしてない。彼らが我々に委ねたのだ」というような人命軽視の極みな台詞も目白押しな映画である。彼は市民を肉の壁とすら認識していない。戦況を本当に立て直す気があるのなら一度引いてでも態勢を立て直すべきであるのに。死を目の前にして自分の宝石の行方を心配する女性がいたりと、様々なことが非合理的で狂気に満ちている。

 ナチスドイツによる一連の戦争は、ヒトラーを筆頭に狂気的な人物が引き起こした悲劇であるかのように描かれる。しかしソ連軍が居所に迫り万策尽きた彼が死を選ぶ直前、側近たちは「私を導いてください」と泣き叫ぶ。果たして彼らや市民は善良で、狂人に支配されて悲劇を演じたと言えるのだろうか。ヒトラーの台頭は大衆の支持によってなされたものだからである。彼もまた独裁者を演じさせられていた部分があるはずだ。

 演出と脚本とブルーノ・ガンツの演技力が素晴らしい。物陰の向こうからヒトラーが現れるシーンが最初と終盤にあるけれど、その立ち居振る舞いの表現力は息を呑む。

 あと、捕虜になるくらいなら名誉のために自決する、という考えは日本人っぽい考え方だけれど、ドイツにも共通なのだなぁと思ったりした。勝算がなくても陣地に籠って徹底抗戦してそして死ぬという姿勢は武将っぽいけれど、ドイツ人のそれはどこが起源なのだろう。