katsu708のブログ

本とか、映画とか、感想とか。

2050年の世界地図―迫りくるニュー・ノースの時代

 

2050年の世界地図―迫りくるニュー・ノースの時代

2050年の世界地図―迫りくるニュー・ノースの時代

 

 

 人口構成、天然資源の需要、グローバル化、気候変動という四つの力から未来を予測する。

 分析に用いられたデータは厳密である(ように見える)が将来の予測についてはやや楽観的である(北極付近の資源を巡る争いは起きない、水は貴重すぎるため水を巡る戦争は起きない等)。かと思えば、グローバル化、すなわち国際関係は容易に変化し得るとも後半で添えられていた。

 現代のエネルギー源の中核を担う石油の長期的な見通しは不透明である。採掘技術によって採掘可能年数は上下するが、供給が先細るのは間違いない。となれば天然ガスか石炭に頼ることになるが、前者は一部の国家に偏っており、後者は環境へのダメージが大きい。

 さて、北の話である。北極付近の領有権は未知である。大陸棚の構造次第ではより多くの水域を支配することができるが、海底の地形はまだ調査の最中である。

 いずれにせよ、環北極圏は諸々の変化を加味した結果、気候変動や水などの資源供給能力によって優位性を増しそうだ。

 なお、訳者のあとがきは適切ではない。人口減少は本書で述べられているように必ずしもデメリットだけではないし、貿易収支などの経済の趨勢は本書の主題ではない。