katsu708のブログ

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海上護衛戦

 

 

海上護衛戦 (角川文庫)

海上護衛戦 (角川文庫)

 

  艦これ関連本。海上護衛の指揮官から見た太平洋戦争。

 これまではミッドウェー以降に戦局が悪化したような印象だった。しかし米軍の潜水艦は戦中を通じてぽこぽこ日本の艦船を沈めているわけで、資源の輸送能力や経済力は着実に削られていたようである。ボーキサイトを南方から輸送して加工して艦載機にするために6ヶ月を要するとの記載もあったから、通商破壊は即効性はなくとも確実に効果を挙げていたようだ。

 南方から資材を輸送できなくなった時点で勝敗は決していたようなものだが、沖縄に上陸を許すどころか下関に機雷を撒かれているらしい。これでもまだ継戦派がいたようなので驚きである。戦争は、現在の人命や財産の犠牲と引き換えに将来の人命や財産の喪失を防ぐことにあるので、おそらくいかに有利な条件で講和するかも計算の一部だったのだろう。窺い知ることはできないが。

 結果は歴史が示す所で、指導者は海上護衛に十分なリソースを割かなかったし、いかに著者が奮闘しようと大勢は変えられなかった。敗戦の理由は多々ある。そもそも科学技術が低い、資源が足りない、指揮系統が一貫していない、指揮に合理性がない(ように見える。少なくともこの本によれば)、戦果や彼我の状況を正しく認識していなかったし、認識する基準もなかった。

 そういう組織の下で不合理に散っていた人々を思うと悲哀を感じざるを得ない。戦争は戦略論や組織論の立場から見ても有意義そうである。目標の設定、成果の計測、指揮官の評価、判断やその妥当性をいかに確保するか、等々。

 以下気になった点をメモ。

ヨーロッパ人種に比べると、日本は概して堅忍不抜、不撓不屈の精神に乏しいといわれている。いわば、線香花火型である。華々しく攻勢を取って、勝敗を一気に決するにはそれでよいが、海上護衛戦のような地味で、受け身一方の作戦には適しない。(p.61)

 日本人は我慢強いかのようなイメージがあるが、これが意外にも戦中・戦後の日本人像らしい。確かに、華々しい活躍や散り様に美学を感じる部分もあるので、この点にも一理ある。