世界史で学べ!地政学
書かれた当時はアメリカは中東に興味を無くした平和主義者オバマで、今のトランプ時代との差を感じる。
今の米中関係は所謂シーパワーとランドパワーの対決なのだなと。
- 作者: 茂木誠
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2016/12/24
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
2050年の世界地図―迫りくるニュー・ノースの時代
人口構成、天然資源の需要、グローバル化、気候変動という四つの力から未来を予測する。
分析に用いられたデータは厳密である(ように見える)が将来の予測についてはやや楽観的である(北極付近の資源を巡る争いは起きない、水は貴重すぎるため水を巡る戦争は起きない等)。かと思えば、グローバル化、すなわち国際関係は容易に変化し得るとも後半で添えられていた。
現代のエネルギー源の中核を担う石油の長期的な見通しは不透明である。採掘技術によって採掘可能年数は上下するが、供給が先細るのは間違いない。となれば天然ガスか石炭に頼ることになるが、前者は一部の国家に偏っており、後者は環境へのダメージが大きい。
さて、北の話である。北極付近の領有権は未知である。大陸棚の構造次第ではより多くの水域を支配することができるが、海底の地形はまだ調査の最中である。
いずれにせよ、環北極圏は諸々の変化を加味した結果、気候変動や水などの資源供給能力によって優位性を増しそうだ。
なお、訳者のあとがきは適切ではない。人口減少は本書で述べられているように必ずしもデメリットだけではないし、貿易収支などの経済の趨勢は本書の主題ではない。
ヒトラー~最期の12日間
空耳嘘字幕で有名なこれ。
ヒトラー~最期の12日間~スタンダード・エディション [DVD]
- 出版社/メーカー: 日活
- 発売日: 2006/11/10
- メディア: DVD
- 購入: 1人 クリック: 203回
- この商品を含むブログ (129件) を見る
十分な装備が無い市民にベルリンの防衛を命じる幹部ゲッペルスの「我々は国民に強制はしてない。彼らが我々に委ねたのだ」というような人命軽視の極みな台詞も目白押しな映画である。彼は市民を肉の壁とすら認識していない。戦況を本当に立て直す気があるのなら一度引いてでも態勢を立て直すべきであるのに。死を目の前にして自分の宝石の行方を心配する女性がいたりと、様々なことが非合理的で狂気に満ちている。
ナチスドイツによる一連の戦争は、ヒトラーを筆頭に狂気的な人物が引き起こした悲劇であるかのように描かれる。しかしソ連軍が居所に迫り万策尽きた彼が死を選ぶ直前、側近たちは「私を導いてください」と泣き叫ぶ。果たして彼らや市民は善良で、狂人に支配されて悲劇を演じたと言えるのだろうか。ヒトラーの台頭は大衆の支持によってなされたものだからである。彼もまた独裁者を演じさせられていた部分があるはずだ。
演出と脚本とブルーノ・ガンツの演技力が素晴らしい。物陰の向こうからヒトラーが現れるシーンが最初と終盤にあるけれど、その立ち居振る舞いの表現力は息を呑む。
あと、捕虜になるくらいなら名誉のために自決する、という考えは日本人っぽい考え方だけれど、ドイツにも共通なのだなぁと思ったりした。勝算がなくても陣地に籠って徹底抗戦してそして死ぬという姿勢は武将っぽいけれど、ドイツ人のそれはどこが起源なのだろう。
風立ちぬ
内容は空虚。二郎が徹頭徹尾飛行機の設計者として設定されているからである。彼が妻を愛していたかという疑問はたぶん無意味。結核の患者にキスするシーンが何度もあったり、彼女の目の前で煙草を吸うシーンがあるが、医学的な知識が無かったのかもしれないし、男性優位の時代故の愛し方なのかもしれない。
高い航空性能と引き換えに防弾を度外視した機体は、工学的には美しいかもしれないが、パイロットにとっては非人道的である。終盤で敵機に容易に背後を取られて墜落していく機体が印象的である。「(機体は)一機も帰ってこなかった」と回想する二郎の視線が航空機の喪失のみに向けられているのは明白だろう。 「俺たちは武器商人じゃない」との同僚の言葉もやはり虚しい。どう取り繕っても彼らは武器商人だからである。
ただ飛行機が壊れる様は綺麗ですらあった。空気抵抗で主翼が多数の破片に分解していくシーンの描き方は流石。あと夜警の人影の動きも良かった。 テクノロジーに取り憑かれること、そしてその功罪が在った。そこに何かの主張があるわけではなく、意図的に主張を抑えているのだろう。それがかつて自身も航空機を数多く扱ってきた宮崎駿の限界であり選択であるように感じる。
テクノロジーの進歩に関わる者は無謬でも潔白でもいられないんじゃクソが、って感じが非常によく伝わってきていい映画でした。純粋な憧れはある意味狂気だし人として最低だったりするし。上司と一緒に試作機に乗って油まみれになるのはその暗示かもしれない。いずれにせよ、宮崎駿の引退作としてこれ以上のテーマはないのではという気はする。
海上護衛戦
艦これ関連本。海上護衛の指揮官から見た太平洋戦争。
これまではミッドウェー以降に戦局が悪化したような印象だった。しかし米軍の潜水艦は戦中を通じてぽこぽこ日本の艦船を沈めているわけで、資源の輸送能力や経済力は着実に削られていたようである。ボーキサイトを南方から輸送して加工して艦載機にするために6ヶ月を要するとの記載もあったから、通商破壊は即効性はなくとも確実に効果を挙げていたようだ。
南方から資材を輸送できなくなった時点で勝敗は決していたようなものだが、沖縄に上陸を許すどころか下関に機雷を撒かれているらしい。これでもまだ継戦派がいたようなので驚きである。戦争は、現在の人命や財産の犠牲と引き換えに将来の人命や財産の喪失を防ぐことにあるので、おそらくいかに有利な条件で講和するかも計算の一部だったのだろう。窺い知ることはできないが。
結果は歴史が示す所で、指導者は海上護衛に十分なリソースを割かなかったし、いかに著者が奮闘しようと大勢は変えられなかった。敗戦の理由は多々ある。そもそも科学技術が低い、資源が足りない、指揮系統が一貫していない、指揮に合理性がない(ように見える。少なくともこの本によれば)、戦果や彼我の状況を正しく認識していなかったし、認識する基準もなかった。
そういう組織の下で不合理に散っていた人々を思うと悲哀を感じざるを得ない。戦争は戦略論や組織論の立場から見ても有意義そうである。目標の設定、成果の計測、指揮官の評価、判断やその妥当性をいかに確保するか、等々。
以下気になった点をメモ。
ヨーロッパ人種に比べると、日本は概して堅忍不抜、不撓不屈の精神に乏しいといわれている。いわば、線香花火型である。華々しく攻勢を取って、勝敗を一気に決するにはそれでよいが、海上護衛戦のような地味で、受け身一方の作戦には適しない。(p.61)
日本人は我慢強いかのようなイメージがあるが、これが意外にも戦中・戦後の日本人像らしい。確かに、華々しい活躍や散り様に美学を感じる部分もあるので、この点にも一理ある。
四月に読んだ本
扱うテーマの重さのわりに落とし所がドラマっぽい感じで流行りそう。そんなこと言われたら外で遊べないよなー、と例の回を読んでの感想。
これすごく好き。2014上半期暫定一位ぐらい。エログロ×江戸インテリ。
内容について語る事はあまりない(ネタバレになりそうだし、真正面から何かを語ろうとすると厨二っぽくなりそうでもあるし)。
CV. 井上麻里奈もイメージ通りでいい感じ。